クラウドバンクの行政処分の内容とそれに対する改善策
2015年7月クラウドバンクが業務停止命令を受ける
2015年7月、日本においてソーシャルレンディング業界の一角を占めるクラウドバンクに対して、証券取引等監視委員会が業務停止命令及び業務改善命令を下しました。その内容の主なものは、2015年7月10日から10月9日までの間の新規出資勧誘の停止及び顧客分別金信託額の適切な管理を行うこと等です。
(詳しくはクラウドバンクのプレスリリースをご覧ください、https://crowdbank.jp/news/20150702_001.html)
分別管理できていない!が理由
この行政処分の理由は簡単に言えば、会社の資金と投資家から預かった資金が分別管理できていない、よって当面は新規出資の勧誘禁止、というのがその内容となります。 顧客資産の分別管理については、ソーシャルレンディング業界に限らず、お金を預かる業界に対して、規制当局が最も神経を尖らせている部分です。クラウドバンクの言い分としては、増え続けている案件にシステム処理が追いついていないというものですが、問題はそこではなく分別管理できていない事そのものです。資金管理できていない会社は大きく信用を落とします。その後、クラウドバンクは3ヶ月の営業停止+自主営業停止期間を経て、2015年11月より業務を再開しています。
行政処分ニュース引用:https://crowdbank.jp/news/20150702_001.html
当社に対する関東財務局の行政処分について
平成27年6月26日付けで、証券取引等監視委員会から当社に対する検査結果に基づき、行政処分を行うよう勧告が行われておりましたが、本日、関東財務局長より行政処分を受けることとなりました。
常日頃より当社を信頼し、サービスをご利用いただいておりますお客様をはじめとする関係各位にご心配とご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫び申し上げます。処分の内容は、
● 業務停止命令
1. 平成27年7月10日から平成27年10月9日までの間、匿名組合の出資持分の募集の取扱い業務のうち、新規の勧誘を伴う業務を停止すること。
2. 平成27年8月10日から平成27年10月9日までの間、グリーンシート銘柄の売買等業務のうち、新規の勧誘を伴う業務を停止すること。
3. 平成27年7月10日から平成27年10月9日までの間、匿名組合の出資持分の募集の取扱い業務及びグリーンシート銘柄の売買等業務以外の金融商品取引業に係る新規の業務を行わないこと。
● 業務改善命令
1. 本件法令違反の状況について、システムの見直しを含む抜本的改善策を策定し、平成27年10月9日までに実施すること。
2. 金融商品取引業務を適切に行うための経営管理態勢、業務運営態勢及び内部管理態勢を整備すること(本件に係る責任の所在の明確化を含む。)。
3. 正確な顧客預り金残高を早急に把握し、全顧客に対して、本件経緯を説明のうえ残高照合を行うとともに、顧客分別金信託額の適切な管理を行うこと。
4. 当社が取扱会員となっているグリーンシート銘柄の発行会社と今後の対応について早急に協議し、発行会社の意向を最大限尊重した措置を講じること。
5. 上記1〜4について、その対応・実施状況を平成27年9月25日まで(上記1の改善策に係る実施計画については、平成27年8月3日まで)に書面で報告すること。
です。
当社は、今般の処分に至りましたことについて重く責任を受け止め、深く反省するとともに全ての業務を見直し、意識改革を含む改善策を責任もって実行して参ります。
今後、改善策に全力で取り組み、信頼の回復とお客様に対するサービスの向上に全力を傾注して参りますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
行政処分をうけたクラウドバンクの改善策
対応策
この行政処分を受けて日本クラウド証券会社は次のような改善策を提示しています。
●コンプライアンス機能の強化
コンプライアンス機能強化を強化します。具体的にはバックオフィス部門の人員増強、業務全般のチェック体制の徹底により管理体制を整備します。
●業務管理フローの見直しと適切な人員配置
クラウドファンディング業務の実態に即した社内の業務フロー及び規程の整備と、その適切な運用を可能とする人員の再配置を実施します。
●経営管理態勢の強化
経営管理態勢を抜本的に見直し、業務執行責任者に担当部門の権限を委譲し、担当部署の責任を明確にすることにより、業務管理を強化いたします。
●業務系システムのアップグレード
当社のクラウドバンク業務を担っている従来の業務系システムを全面的にアップグレードするものとし、平成27年1月初旬より開発に着手し、クラウドバンクの取引に関わる自動処理機能の実装を軸とした改善を行っております。
●管理系システムの変更
2015年4月1日より、従来の会計システムからより機能が充実した会計システムへ移行いたしました。この変更により、7月にアップグレードを予定しております業務システムと会計システム間の連携が強化され、手動入力が極小化することで人為的なミスの発生余地を削減いたします。
もともと当時のクラウドバンクはかなりの勢いで融資額を伸ばしており、9ヶ月で10億円もの募集額を突破するなど何かと話題の会社としても知られていました。と同時に「案件がよくわからない」「説明が足りない」「怪しい」などの評判も多く、多くはその予想が当たってしまったようです。この件で日本クラウド証券会社は3ヶ月の業務停止命令を受けていますが、停止命令が解除されたあとは投資金額が流入し、募集金額は90億円を突破し100億円を超えるのも時間の問題になっています。
なぜ行政処分をうけた、さらに「怪しい」とも言われている会社の募集にこれほど殺到しているかの理由についてはいくつかありますが、なんといっても「利回りが高い」という点があります。特にキャンペーンなどで7%の利回りを得られる案件というのはそう多くはありません。それにいくら行政処分を受けたり、償還遅延を起こしたと入っても、最終リスクである貸し倒れは起こしていない、つまりお金が戻ってこなかったわけではないことも、ある程度投資家の心理に影響しているのかもしれません。もともと高いリターンを求めるのであればある程度のリスクは仕方なく、最終的にお金が戻ってきているのだから投資しようと考えているリターン重視の投資家が多い印象です。
しかし、処分に対してどれほど改善が期待できるのかは未知数です。
クラウドバンクは償還遅延や行政処分があるが高い利回りが魅力の「攻めの投資」