マイクロソフト共同創業者ポール・アレン、戦艦武蔵と2兆円の遺産
マイクロソフトの共同創業者にして大富豪、ポール・アレン
ポール・アレン氏を簡単に理解するなら、マイクロソフトの共同創業者にして大富豪でしょう。言ってしまえば世界を代表する”超”が4つ5つつくくらいの大金持ちになります。惜しまれながらも2018年10月15日に血液がんの一種、非ホジキンリンパ腫のため死去しました。彼の大富豪としての生き方を見てみましょう。
総資産2兆円を超える大富豪
その資産は2017年時点の資産205億ドル(2兆2,500億円)、フォーブスが発表する世界の長者ランキングでも44位にランクインしている文字通り世界を代表する大富豪の1人です。
シアトルのスポーツチームのオーナー
スポーツチームも数多く所有しており、NFLのシアトル・シーホークス、NBAのポートランド・トレイルブレイザーズ、MLSのシアトル・サウンダーズFCのオーナーにもなっています。
慈善活動家としての顔
彼はただの資産家に留まらず、莫大な資産を利用しての慈善活動にも精力的に活動していました。傘下のポール・G・アレン財団を通して様々な事業に寄付を行い、自身がファンであるSFの博物館Science Fiction Museum and Hall of Fame を設立したり、電波望遠鏡などの建造にも出資したりしています。
生涯を通じて寄付活動に投じた資金は20億ドル、日本円にして2000億円を超えるともいわれています。
他の慈善活動
- アレン脳科学研究所
- 有人宇宙船 SpaceShipOne に出資
- アフリカゾウの調査事業「グレート・エレファント・センサス」へ出資
- サメやエイを3年調査する Global FinPrint initiativeに出資
- エボラ熱対策に1億ドルを寄付
- ワシントン大学に図書館建造などへ数千万ドル以上出資
マイクロソフトをビル・ゲイツと共に創業
アレン氏は1953年にアメリカ・ワシントン州シアトルで生まれ、地元の学校であのビル・ゲイツ氏と出会いました。彼ら2人は共にコンピューター好きで学校のPCをハッキングするなど若気の至り的な行動もやっています。
その高校生の時代にはもう会社を設立して、州政府相手に独自開発の交通量分析システム納品するなど今後の活躍の前兆のような活動を行っています。
その後アレン氏はワシントン州立大学に進学しますが中退し、ハーバード大学にいたゲイツ氏を説得。彼も中退させてあのマイクロソフトを共同創業します。創業者として大株主でもあったアレン氏はその後マイクロソフトが大躍進を遂げたことで、保有している株式も何千倍にも高騰、巨万の富を得ることになりました。
闘病とマイクロソフトへの復帰、そして発病
ただアレン氏は1983年に持病であるホジキン病を理由にマイクロソフト社を退社しており闘病生活をおくります。その診断は誤診であったという話もあり、1990年にはマイクロソフトに復帰をしますが2000年には退社。2009年には結果として死の原因となった非ホジキンリンパ腫であることを公表、何度もがんを再発させての闘病生活でした。
アレン氏は兵器遺産収集に興味
アレン氏は戦時兵器に関する興味が深く、中でも実際に利用された戦闘機や戦艦に強い関心を示していました。こういったコレクター傾向の強い大富豪のやることといったら桁違いです。
なんと彼は世界中の軍用機を多数 ”個人所有” しており、その「私設航空機博物館」としてワシントン州スノホミッシュ郡ペインフィールド空港にてフライング・ヘリテージ・コレクションを運営しているのです。
実際の戦艦を探検調査
彼の興味はただ単に戦闘機をコレクションするに飽き足らず、自らが戦争で沈んでしまった戦争兵器の在り処を探索する行動に出ました。アレン氏の父親は実際に太平洋戦争に従事した軍人でもあったため、戦艦にも強い興味を持っていたのです。
大富豪ならではの力を駆使し、”ギガヨット” と呼ばれるヘリポートやプールなどの快適装備を備え外洋を長期間航行できる巨大な船を所有し、自らが戦艦を探索しにいったのです。普通の個人が国家事業でもないとできないような規模のことをやってのける・・・もはや言葉がありません。
写真中央にある巨大ヨットがそれ:
沈没地点が不明だった日本の戦艦「武蔵」を発見
アレン氏は数多くの海で沈んだ戦艦を発見し、学術的貢献もおこなっています。彼が発見したのはイギリスの巡洋戦艦「フッド」、アメリカの重巡洋艦「インディアナポリス」、アメリカの空母「レキシントン (CV-2)」、そして日本の巨大戦艦「武蔵」です。
2015年3月2日、ポール・アレン氏が武蔵をシブヤン海の水深1000mの地点で発見し、その情報をTwitterで発信。瞬くまに世界中に驚きが届けられました。
特に話題が沸騰したのは日本です。日本では艦隊を擬人化したゲーム「艦これ」がブームになっており、当然戦艦武蔵も擬人化されてゲームに登場、いろいろな話題を振りまいていました。
「艦これ」ゲームに登場する武蔵:
そんな渦中に ”実際のリアル武蔵” が発見されるのですから話題は沸騰するはずです。アレン氏は2017年にも日本の駆逐艦「島風」と思われる残骸を発見しており、大きな話題になっていました。
当時のアレン氏のツイート:
WW2 Battleship Musashi sank 1944 is FOUND > 1K M deep by MY Octopus Sibuyan sea, bow Chrysanthemum, huge anchor. pic.twitter.com/b9ZMA0icI8
— Paul Allen (@PaulGAllen) 2015年3月2日
アレン氏の遺産の行方について
前述の通りアレン氏は個人資産で2兆円を超えるとてつもない財産を残していました。しかも彼は生涯結婚をせずに独身のままで、子供はいません。妹が彼の資産管理会社の代表をつとめていることがわかっています。
アメリカでは相続税に10億円近い控除が認められているとはいえ、2兆円を超える彼の資産を相続すればとてつもない相続税がふりかかってくることになります。
ただ彼は2013年に自分の死後、財産の半分以上を慈善団体に寄付することを遺言として発表しております。当時のレートにして135億ドル。日本円にすると1兆5000億円くらいになります。
遺言状を作っていることからも財産整理についてはしっかりとやっていることが予想されます。アメリカではトラストと呼ばれる信託を作ったり、財団法人や公益法人などを幾重にも組み重ねることによって殆ど相続税を取られずに資産を残せるスキームがあります。あそこまでの大富豪でしたら当然その対処はやっているのでしょう。