2010年のFX業界:淘汰の中でビジネスモデル転換を模索
次々と淘汰され生き残りを模索する2010年
2010年、2011年にレバレッジを規制することも決定したために2010年も2009年に引き続き業者の撤退や廃業が相次ぎました。数々の規制(2010年2月には信託保全義務化施行)や金融庁の監視の目も行き届くようになったため、この頃の業者は撤退することはあれど資金の持ち逃げなどは全くなくなりました。ピーク時には200社あったFX業者もあっという間に100社をきっていました。人気であったフォーランドフォレックスが前代未聞の顧客に 「ポジション決済のお願い」 をする事態からもわかるように、各FX業者もかなりやばい状態が続いていました。この当時の外為どっとコムにも行政処分が下り、外為どっとコムは業務停止命令を受けて業界最大手の座を後に明け渡すことになりました。
この時代から大きく変わったのがレバレッジが規制されたことで多くのFX業者は魅力のハイレバレッジを使うことができなくなったために新しいアピールポイントを模索することになったことです。ここで台頭するのがマネースクエアなどのハイレバレッジを導入せずにサービス重視に傾倒していた業者です。レバレッジなどなくても、魅力あるサービスで顧客をつなぎとめればよいという経営方針がここにきて光り始めたのです。これによって2010年頃からはスプレッドやレバレッジみたいな業者の性能よりも、どのようなサービスを提供してくれるかのサービス重視の時代へと変わっていくのです。FXだけでなくCFDやBO、さらにはキャッシュバックを重視したGMOクリック証券や、逆にスプレッドを極限まで狭めたDMMFX、食品などのキャンペーンを充実させたヒロセ通商など、各々が独自サービスを作り出して他社との差別化を図っていったのです。FXの次に一世を風靡したバイナリーオプションが開始されたのもこの頃からです。しかしその流れに乗ることができずに撤退した業者も少なくありませんでした。
2010年は淘汰の中、変革を模索する年
2010年9月17日:外為どっとコムは関東財務局より、「業務停止命令」と「業務改善命令」の2つの処分を受けました。行政処分の内容は為替レートの誤検出やロスカットの誤作動を引き起こしたシステムトラブルです。もちろん異常レートには対処し、その取引自体を無効する対処をしています。しかし一時のことはいえ、異常レートやロスカットの作動はちょっといただけないものであり、かなり顧客の信頼を損ねました。これによって資金流出が激しくなり外為どっとコムは業界最大手から脱落しています。
外為どっとコムは行政処分ページ:http://www.gaitame.com/info/reopen/
2010年の金融事件
2010年欧州ソブリン危機
1月19日 日本航空破綻。
1月21日 アメリカのオバマ大統領が新金融規制案(ボルカー・ルール)を発表。
10月5日 日本銀行が資産買入等の基金の創設を発表。
10月12日 旧ジャスダック、ヘラクレス、NEOの3市場を統合し新ジャスダックが発足。
12月15日 日本銀行が上場投資信託(ETF)・REIT買い入れを開始。
2010年に熾烈な競争から脱落したFX業者
2010年1月 : 三菱商事フューチャーズが事業譲渡 → 上田ハーローFX
三菱系列で安全かと思われてきた三菱フューチャーズですがFX事業を廃業し上田ハーローへ事業譲渡しました。 撤退理由は書かれていませんが、三菱Fはもともと商品先物系の業者ですので、 やっぱりおまけ程度に始めたサービスでは今の業界には対抗できなかったのでしょう。実はここは危ない兆候が以前あったのです。ちょうど1年ほど前に、自己資本規制比率が100%を割りそうで金融庁からお叱りを受けたことがあったのです。その当時は親会社から援助されたのか、資本金を増強し事無きを選ました。しかし採算が取れないという根本的問題を解決できずに撤退です。ただし顧客のポジションは希望があれば上田へ移管がなされるようで一安心です。 この辺は腐っても三菱グループです。他の誠意のない業者とは大違いです。
2010年2月 : 前代未聞の ”おねがい” をしたフォーランドフォレックス
2010年が始まってからFX業界に前代未聞の出来事が起こりました。高いスワップ金利で人気を誇っていたフォーランドフォレックスが、なんと ”顧客にポジションの決済をお願いする” という事を起こしたのです。事の発端は2月より施行される金融信託の整備です。今年度よりすべてのFX業者は顧客から預かった証拠金を信託保全しなくてはなりませんでした。そのため各FX業者は、今までの分別保管から信託銀行へ証拠金の移し替えを行わなくは成らなかったのです。ココでフォーランドフォレックスが問題になったのは信託保全先の変更をする際、信託銀行からカバー先への保証状が発行されない状態にしてしまったことです。そもそもFX会社というのは、顧客からカバー先へ注文を取り次いでいるだけの仲介業者です。しかし顧客から保証金を預り注文を受けると、まず顧客の保証金はすべて信託銀行へあずけなければなりません。そうなるとFX会社は、カバー先へ注文をする際の証拠金を自社でまかなわれなければなりません。本来、信託銀行から保証状といわれる証明書を発行してもらうことでその保証金を自社で用意擦る必要はないのですが今回フォーランドフォレックスは、信託先を変える際のゴタゴタで信託先から保証状を発行してもらえない状況になってしまい、顧客のポジションを維持する保証金を自社で用意しなければならないのです。フォーランドフォレックスの預り残高(この騒動で現在は未公開)を見てみると、なんと180億円にものぼります。全部が全部保証金になっているわけではありませんが、相当額の保証金になります。現在のフォーランドフォレックスはこれと同等の金額を用意しなければいけません。しかし、小さい業者であるためそんな大金は用意できるはずもなく、やむなく、顧客へポジションの決済を呼びかけてフォーランドフォレックスが負担する保証金の額を減らしてくれとお願いしているのです。この問題の根源は、規則が替わるのにさっさと信託先を変更しなかった経営陣の不手際と言えるでしょう。結果的にこの騒動は、顧客が泣く泣くポジションを整理してくれたおかげで事無きを得ました。その後さしたる問題も起こっておらず、今使っている人はこんなゴタゴタが起こったことなど忘れてしまってるかもしれません。
2010年2月 : アイフォレックスが登録抹消処分を受けて事実上廃業
アイフォレックスという福岡のFX業者は、2010年から義務化する信託保全がきちんとされてないことに対する行政処分を受けました。その内容は、1.顧客の預かり資産を区別管理していなかった 、2. 区別に対する具体的な対策が全くない 、3. 信託銀行と締結しておらず、信託保全できない状態 という信託保全をまるでやる気のないような状況にあります。そのため金融庁から完全な処分である福岡財務支局長(金商)第6号の登録抹消を言い渡しました。この登録の取消処分というのは過去に 犯罪のデパートとも言われたJNSに下された処分であり、最も重い処分になっています。 そう、アイフォレックスはFX業者としてもうおしまいでした。アイフォレックスに関しては、以前怪しい動きをしていると連絡を受けており なんだかんだいろんな手を使って、悪どい行動を起こしそうな感じでもありますが さすがに登録取り消しという最後通告を受けた以上年貢の納めどきでしょうね。
2010年2月 : くりっく365の人気業者:スター為替証券が証券業務を廃止
これはFXに関するものではないのですが、一応記述しておきます。くりっく365の中でのインヴァスト証券の次に人気といっていいスター為替証券が、証券業務を廃止してFX業務一本化になるとのことです。スター為替といえば、キャンペーンが豪華で有名ですがくりっく365異常レート事件では、顧客のポジをその旨を通達することなくロスカットした業者でもありちょっと人気に陰りも見えてきていました。まぁとりあえずFX業務に支障はないみたいですのでそんなに重要なニュースでもないですね。
2010年6月 : みんなのFXが 「みんなのFX」 サービスをトレイダーズ証券へ譲渡
2010年の8月からついにレバレッジ規制が始まり、FX業者には悪影響が出ています。そしてみんなのFXが、なんとFXサービスをトレイダーズ証券へ事業譲渡することになったのです。みんなのFXは旧社名をパンタレイ証券といい、旧ライブドア経営陣や中国系資金が流入しているEMCOMグループの子会社です。いろいろ怪しい噂が耐えない上に、2007年には行政処分を受けており、けっして良い業者とはいえませんでしたが、低スプレッドやハイレバレッジなどをウリ文句に短期売買をするトレーダーの方にはそこそこ人気があったところです。しかし親会社のEMCOMホールディングスは経営環境が非常に悪く、黒字であった 「みんなのFX」 事業を悪名高いトレーダーズ証券で譲渡してみんなのFX自体は廃業することになったのです。ただ顧客のポジションは事業譲渡なのでポジションの強制決済は起こらないようです。そもそも半年ほど前にEMCOMTRADEが廃業したときもトレーダーズ証券に引継をしており、ポジションの移管もされていました。これで2回目なので問題も起こらないでしょう。
2010年6月 : フォレックスドットコムジャパンがアリーナFXから事業を譲渡される
弱小業者アリーナFXがForex.comに一部事業を譲渡することになりました。アリーナFXは知名度が非常に低い弱小FX業者であり、このニュースが出されてもほとんどのブログが取り上げていないことからもその認知度の低さが伺えます。システムはアメリカ系GAIN社のものであり、Forex.comと同じGAINグループに属しています。そのため事業譲渡は同システムゆえに簡単なのかもしれません。 一方のForex.comはここ最近社名を変えた新FX業者です。元々はゲインキャピタルジャパンといいGAIN系の社名が入っていることからもわかるように数少ない日本のGAIN系FX業者でした。社名変更時にプラットフォームを日本で人気のメタトレーダー:MT4にしたことからMT4業者として最も人気がある業者です。日本で他にMT4を使えるところには121証券とODLJapanがありますが、121証券は悪い噂が絶えない怪しいところですし、ODLはスキャル規制をしていて評判があまりよくありません。消去法からもForex.comはMT4業者として人気が高くなっています。
2010年7月 : サクセットFXがFX業務を止めて廃業
サクセットは平成22年7月30日(金)をもって店頭外国為替証拠金取引事業(第一種金融証券取引業)を廃業することを決定しました。サクセットというFX業者は最近では珍しくなった電話取引のFX業者です。今では絶滅しているようなサービスをやっていたので、ネット取引全盛のこの時代に電話取引のみは無謀な経営だったと言わざるを得ません。そして顧客ポジションは、「平成22年7月23日(金)18時00分までに建玉が残っている場合には、平成22年7月23日18時15分から21時00分までの間に、弊社の裁量により決済させていただき、平成22年7月28日(水)15時までに、お客様の登録出金口座に証拠金を返還させていただきます。」 ということで、強制決済されることになってしまいました。最近は事業譲渡などできちんとポジションの移管までやってくれるところが多い中で時代遅れを感じさせてくれるひどい対応です。アルファFXのように資金持ち逃げされるよりは数段マシですが・・・。まぁこんな誠意のない業者だからこそ廃業してしまったのです。
2010年7月 : セントラル短資FXが高レバレッジサービス 「FXハイパー」 を終了
セントラル短資FXは、レバレッジ規制によって高レバレッジサービス 「FXハイパー」 の商品価値が無くなるということを理由に、FXハイパーの終了を決定しました。サービス終了というと、2009年の誠意のない愚企業の振る舞いがフラッシュバックされて悪いイメージがつきまといますが、セントラル短資FXは違います。まずサービス終了まで3ヶ月というかなり長い期間をもっての通達です。終了予告は3月に出ましたので、実質4ヶ月の猶予がありました。顧客にとってはかなり時間があるのでありがたい限りです。そしてFXハイパーのポジションですが、できれば決済をして欲しいとのことですが、希望すればセントラル短資FXの主力サービス:FXダイレクトへの移管も可能です。この辺の対応はぬかりなく、まさにお手本のようなものです。いや、これが普通であって、2009年のひどいところばかり見ていたから、素晴らしい対応に見えてしまうのかもしれません・・・。まぁ、なんにせよセントラル短資FXで取引している方にとっては全く損害のない対応です。FXハイパーは高レバレッジということでポジションを長期保有している人もあまりいませんし問題は起こらないでしょう。
2010年10月 : 日興コーディアル証券のFXサービスが終了
日興コーディアル証券のFXサービス 「イージーFX」 は2010年10月30日をもってサービスを終了することを決定しました。このイージーFXというサービスは、なんと今の時代にいたっても手数料をとっているという時代後れも甚だしいFXでした。100lot以下の取引には1lotあたり、なんと手数料800円もかかっていたのです。それも電話取引ではなくインターネットのリアルタイム取引でです。これは顧客から愛想をつかされてもしょうがない低レベルなサービスでした。おそらく株取引をしていてFXに無知な初心者投資家をターゲットにしただけのものだったのでしょうね。撤退は当然でした。
2010年11月 : 豊商事よりe-kawase 事業撤退のお知らせ
豊商事はくりっく365よ店頭FXの2つのサービスをもっていた商品先物系の業者であり、サービス開始が10年前と老舗の部類に入る歴史あるサービスですが、人気があったとはいいがたいところです。2010年8月のレバレッジ規制によって店頭FXをやる魅力がなくなっており、豊商事は店頭FXサービスを廃止することなりました。そして顧客のポジションは、事業を廃止するために受け入れ先もなく、11月26日に強制決済されてしまうようです。これにより豊商事にはくりっく365のサービスだけが残ることになりました。ですがこちらのサービスもあまり芳しくないようです。なにしろここの手数料は、全くりっく365業者の中でもダントツに高い片道1,050円だからです!往復すると2,100円もかかってしまうバカ高い手数料です。正直言って豊商事はくりっく365でもあまりよい成績を残せそうにありません。