普通に働ければいいだって・・・日本の労働環境は世界最低なんだぞ
親が言う普通に働ける時代なんて終わっている
10代でも中学3年生や高校生にもなると、親や先生と将来のことや仕事について話す機会があるでしょう。その話は人によって千差万別ですが、親の多くには 「普通の会社に入って普通に働ければいい」 という人がけっこういます。そして若い方の多くにもそういった普通に働ければいいと思っている人が多いようです。しかし、あなたたちとその親世代には、生きていた時代がかなり違うために大きなジェネレーションギャップが存在しています。実は、あなたの親や先生が若い頃を生きていた昭和の時代は、労働者が非常に高待遇を受けていた時代があったのです。いまの状況とむかしの状況をちょっとくらべてみましょう。
高待遇の昭和時代
あなたの親や先生が生きた昭和の時代・・・高度経済成長とバブル経済のおかげで日本の会社はどこも大儲けでした。そのため会社は大盤振る舞いで労働者を手厚く保護してくれました。昔はIT技術なんてありませんでしたから、会社をささえてくれる人間の存在が非常に貴重だったのです。だから、あなたの親たちは、会社に依存するだけで何の問題もなく生活することができました。この経験があるので、あなたの親世代は、会社に就職できれば、満足な給料がもらえて、満足が生活ができると思っているのです。しかし高度経済成長の終焉とバブル崩壊によってこの高待遇は終わりを告げます。
低待遇の平成時代
1990年代にはいると不況による業績悪化が起こってしまい、儲からなくなった会社は労働者の待遇を180度転換します。終身雇用や年功序列などの昭和的な労働者の待遇を派遣や日雇いなどの使い捨ての待遇に変更し、労働者を高待遇で守ることはもう止めようということが決まったのです。事実このころから労働者の環境は劇的に悪くなり、格差社会化が急速に進行しました。そして、あなたたち10代の方が生まれて、育ち、いずれは社会の出て行くのもこの時代です。
そう、いまの労働環境とむかしの労働環境では天と地ほどのギャップが存在してしまっているのです。そのため親が言う 「普通の会社に入って普通に働ければいい」 という生き方をしたからってそのとおりになる可能性は非常に低くなってしまっています。むしろ満足な生活などできなくなってしまったのです。では現在の日本の労働環境がどれほど低待遇になっているのかのデータを一部分お見せしましょう。特に日本が、世界のほかの国とどれだけの差があるのかを知れば驚愕することでしょう。
21世紀になって会社は労働者ではなく株主優先になった
いまの労働者の環境は、親世代の高待遇とはうってかわって、労働者を高待遇で守ることはもう止めようとされています。しかし21世紀になると日本経済は ”戦後最長の景気拡大” という好景気の時代を迎えました。この好景気によって大企業はどんどん史上最高益を叩き出しました。しかしその一方で、全く雇用情勢は改善されず賃金は低く抑えられた状況がずっと続きました。では大儲けしていた大企業のお金は労働者に回らずに、一体どこへいってしまったのでしょうか?
会社は株主と設備投資にお金を使う
実は儲けた利益の大半は、株主の配当と企業の設備投資に振り分けられていたのです。21世紀の好景気というのは新興国の発展によってもたらされたものであり、その新興国には強大なライバルがどんどん出現しました。具体的には中国やインドなどです。21世紀になって世界がグローバル資本主義になっていく中で、日本の大企業も世界の企業を相手に商売をしなければなりませんでした。それには多額の資金や投資が必要です。そうしないと、新興国の企業にどんどん仕事を奪われてしまうからです。ですから大企業はどんなに利益を上げたとしても、それを労働者へは還元せずに株主の配当と企業の設備投資に使わざるを得なかったのです。だから労働環境は一向に改善せず、ワーキングプアや偽装請負の人たちを安い賃金のまま使い捨てていたのです。全ては世界を相手に勝つためです。そのためには、ワーキングプアや偽装請負の人たちがどんな状況になろうが知ったことではありません。大企業が無くなったらお前らの働き口も無くなるんだぞと言わんばかりに使い捨てます。こうして会社はいくら史上最高益を出して大儲けしても、そのお金は株主と設備投資に振り分けられ労働者にはほとんど還元されませんでした。
知っているか?日本の賃金水準は世界最低レベルだぞ
日本の会社が労働者優先から株主優先になったために、労働者の待遇はどんどんひどくなる一方でした。そしてそのひどさは世界でも指折りのひどさを誇るようになっていったのです。ためしに労働者が最低限うけとることのできる ”最低賃金” をみてみましょう。特にこれから社会に出たり、出たばっかりの10代の方には一番身近な賃金が最低賃金です。
上の図はOECDのレポートを元に、世界各国の労働者の最低賃金を平均賃金との相対水準で表したものです。低ければ低いほど、平均賃金よりも最低賃金が低い水準にあり、労働者に最低源支払わなければいけないお金が少ないということです。この図をご覧になればハッキリとわかりますが、日本の最低賃金の相対水準は ”28%” とすさまじく低い水準に抑えられていることがわかります。特にOECD諸国の中で、発展途上国であるメキシコ、韓国、トルコ程度のレベルにあり、先進国の中では世界最低といわざるを得ません。
また日本の最低賃金は生活保護の水準を下回っており、いくらなんでも低すぎだということがよく言われてきました。このため2007年12月最低賃金法が改正され、最低賃金が見直されることになりましたが、引き上げられたのは微々たるものでした。やはり日本の最低賃金は世界最低のレベルにあり、労働環境が整備されていない新興国とほとんど変わらない、あるいはそれよりも劣る水準なのです。これはいかに日本の労働者の環境が悪い状態にあり、搾取されているというなによりの証拠なのです。
知っているか?非正規の賃金は世界ワースト1位だぞ
世界最低のレベルなのは最低賃金だけではありません。上の図は主要なOECD参加国の、パートタイム労働者の賃金水準がフルタイム労働者と比較して時給ベースでどのような水準にあるのかの国際比較を掲げたデータです。この場合のパートという概念は、アルバイトや派遣労働者のことも指していると思ってもいいでしょう。特に10代の人、とりわけ高校生や大学生なりたての人はアルバイトをする人が多いでしょうが、この図を見て驚愕した人もいるのではないでしょうか?
なんと日本のパートの人の賃金は正社員の賃金の半分にも満たないのです。しかし他の先進国では正社員の60%以上、高い水準の北欧諸国(スウェーデン)やスイスでは90%にも到達します。日本のアルバイトやパートのたちはとんでもなく賃金を低く抑えられてコキ使われているのです。最低賃金は、あくまで世界最低レベルであり、その下がいたのでワースト1位は免れることができましたが、今回は文句なしのブッチギリの世界ワースト1位なのです!
日本の労働環境は最低であり、親世代と同じようなことなどできない
あなたの親や先生はまだ労働者の待遇がよくて、文字通りどこかの会社に就職して働ければそこそこの生活ができたのでしょう。しかしいまの時代は、全く違います。会社が労働者から株主優先の方針に切り替えたことによって、いくら会社に尽くそうが、いくら業績を上げようが、どんなに働いて会社に貢献しようとも労働者にはほとんど還元されなくなってしまい、いくら働いても報われない時代へなってしまいました。賃金も一向に上がらないどころか、世界最低レベルの底辺を推移しています。日本の労働環境は世界最低なのです。
しかも、最近は金融危機という世界が同時に不況になる異常事態が起こっており、あなたの先輩世代である20代の人たちは、まともに就職すらできないような状況なのです。こんな状況で、「普通の会社に入って普通に働ければいい」 をどうやって実行したらいいのでしょうか?たとえ 「普通の会社に入って普通に働く」 ことができても親世代のような生活は送れません。
悲しいことですが、
たとえ就職できて普通に働いても
苦しい状況にさらされて生きなければならないのが
今の若い世代の現実です。