1000万人に達するワーキングプアの大半が20代の若年層
20代にどんどん増える若年層ワーキングプア
ワーキングプアとは
「ワーキングプア」 とは汗水たらして一生懸命に働いているのに、いつまでたっても生活保護水準以下の暮らしから脱却できない貧困層のことを言います。このワーキングプアという言葉はアメリカで作られたものであり、日本では、「働く貧困層」 とも 「21世紀の奴隷階級」 とも言われます。しかもこのワーキングプアは20代の若い世代にどんどん増加しているのです。
上の図は厚生労働省の平成19年度の 「賃金構造基本統計調査」 による年収200万未満の労働者を年代別に表したものです。日本ではる年収200万未満の労働者をワーキングプアとみなしていますので、これはワーキングプアを年代別に表したものでもあります。ご覧のようにワーキングプアは全ての年代で30%以上を超えており、年収200万未満の労働者が1,000万人以上いることも納得できます。そして特にワーキングプアが多い年代が、20~24歳の若年層と50歳以上の中高年です。本来これから社会を担うべき若い世代がどんどんワーキングプアとなっているのです!
上の図は上記の図と同じく厚生労働省の 「賃金構造基本統計調査」 によって表されたデータを元に、所得が200万円未満の労働者がここ10年でどう変化したかを表す図です。年収200万円という基準は、日本のワーキングプアが年収が200万円未満の人を指すことが多いので、これを基準としました。
図をご覧になれば一目瞭然のように、年収200万円未満の労働者はここ10年でおおよそ300万人も増加しました。人口減少社会である日本において、労働者が減っている状態にもかかわらず年収200万円未満の労働者はどんどん増加しているのです。特に2006年(平成18年)には、年収200万円未満の労働者がなんと1000万人を突破してしまったのです。日本の労働者数は約5000万人ですから、労働者の5人に1人は年収200万円未満の生活を強いられているのです。ワーキングプアの全体が増加しているのですから、ワーキングプアの大半を占める若年層ワーキングプアもどんどん増加しているのです。
若年層ワーキングプアの原因:就職氷河期
ワーキングプアが20代ぐらいの若年層に多いに多い原因のひとつが就職氷河期です。ご存知のとおり、現在の若い世代が就職活動をした時期においては、「失われた10年」 の中でもアジア通貨危機などによる金融不安の影響で新卒採用が大きく絞られた時期でした。これからも2008年の金融危機で第二次の就職氷河期を迎えることでしょう。このような就職氷河期の時期において新卒採用に入ることのできなかった人たちは仕方なく非正規の労働をして食いつなぐしかなくなります。
もうひとつの問題が雇用情勢です。日本はいまだに雇用に対する流動性がほとんどない新卒社会です。そのため新卒でもれてしまった人たちには中途採用の枠しかありません。しかし中途採用における条件は非常に厳しいものであり、主に即戦力となるスキルの高い人材を必要とした雇用です。そのため社会に出ても非正規労働や 「業務請負」 などのスキルがつかない仕事しかできなかった人たちにとってはほとんど可能性が無いのです。そのために一旦新卒採用にもれてしまったこの年代の人は正社員への道がほとんど無く、非正規労働や業務請負に頼らざるを得ない状況に追い込まれているのです。しかも金融危機のような都合が悪い時期になると、簡単にクビを切られる非常に悪い立場なのです。
若年層ワーキングプアの原因:教育崩壊
雇用情勢の問題にもうひとつ影響しているのが20代後半から30代の人が受けた教育の問題です。これらの世代が受けた教育は、あの ”ゆとり教育” における初期の段階、つまり実験段階のゆとり教育を受けた世代です。
ご存知のとおり、ゆとり教育は学力を低下され、全く考える力がつかないバカを量産してしまった制度です。そんな教育を受けたこの世代の人々は非常に思考が浅く、考える力が欠如しています。そのため労働に関する知識もスキルも教育で得られず、企業に必要とされる能力が皆無のまま社会へ出てきてしまいました。そんな彼らと即戦力がほしい企業との雇用のミスマッチが生じてしまうために、企業は間違っても彼らを雇用しません。そして無知な彼らをずる賢い経営者が 「偽装請負」 などによってさらに搾取し、彼らはスキルも知識も得られぬまま、日々使い捨ての労働力としてコキ使われています。
若年層ワーキングプアの話を聞くと、お偉い専門家の人には 『本人の努力が足らないためで自業自得だ』 と言う人がいます。しかし彼らは好きで知識もスキルも皆無になったわけではありません。彼らに知識やスキルを与える教育をせず、社会に出ても、そういった場が皆無だからです。彼らの多くは知識やスキルを得ようと必死です。しかしお金の余裕が無いために学校へも行けず、図書館などで勉強しようにも住所不定で本を借りれず、それどころか食うための労働で時間の大半を使い果たしてしまっているのです。
働けど働けど猶わが生活楽にならざりぢつと手を見る
はたらけど はたらけど
猶わが生活楽にならざり
ぢつと手を見る
上記の歌は今からさかのぼる事約1世紀前、薄幸の天才詩人石川啄木が歌集「一握の砂」に残した歌です。啄木はご存知の方も多いように、宮沢賢治と同様、死んでから名をはせた天才詩人です。彼は生きている間はずっと貧乏に苦しめられた人生を送っており、この歌もそんな状況を表した歌です。しかしそれから100年以上たった現在、この国は100年前と同じような 「もてる者」 と 「持たざる者」 の格差が大きく拡大し、働いても働いても豊かになれない時代に逆戻りをしています。時代の波と人間の欲望によって成り立つ社会というのは、いつの時代も同じようなものです。
現在の日本は、他国とは違ってワーキングプア解決に本腰を入れて取り組もうとはしません。それは100年前と同様に、弱者の下克上を抑えるために、強者が弱者を搾取し、君臨する構図が全く変わっていないからです。現在は雇用の面でそれを垣間見ることができます。
ワーキングプアは生活のために劣悪な労働環境にも振るって応募してくれる企業にとっては最高においしい労働力です。いつでも確保することができ、賃金も少なくて済むし、いらなくなればすぐに解雇できる奴隷のような存在です。こんなおいしい存在をわざわざ無くすようなことはしません。政府も国力を保つために黙認しています。こういった理由で政府も大企業もワーキングプア解決に取り組む理由がありません。結局のところ、ワーキングプア脱出には格差脱出と同様に、己が努力し、己が賢くなり、己自身で脱出するしかないのが日本の現状です。