アイスランドの通貨危機と預金封鎖、国家破産とその後の復活

優良国アイスランド、しかし小国ゆえ・・・


イギリスの北の北極圏、グリーンランドのすぐ近くにアイスランドという国があります。その名のとおりアイスの名が入って、いかにも寒そうな国に思えますが、実は北大西洋海流という暖流のおかけで比較的温暖であり、首都レイキャビクでは冬でも零下数度にしかならないのです。北海道の札幌と同じくらいであり、ひょっとしたら北海道のほうが寒いぐらいです。ちなみに同緯度のシベリアの冬では零下50度になることもあります。

そのアイスランドですが、実は隠れた優良国として知られています。アイスランドの国自体のGDPは少ないですが、国民一人当たりでは世界でもトップレベルです。さらに国際競争力も高く世界で4位、ヨーロッパ1位となっており小国ながらとっても豊かな国です。世界でもっとも汚職が少ない国とも言われています。犯罪率も少なく、日本以上に治安がよいです。日本やニュージーランドのように地理的にも紛争に巻き込まれることも無く、北欧の国々のように福祉国家としても充実しています。教育水準も高く自国語と英語とデンマーク語を小学校から習うため、ほとんどの人は3カ国語を操るトリリンガルです。識字率も99%になります。

また火山国でもあり、その熱エネルギーを利用することで国内の電力ほぼ全てが水力発電と地熱発電で賄われています。家中の電力やシャワーを温めるエネルギーを全て地熱発電でまかなったりするほど電力は潤沢であり、火力や原子力に頼らないエコ国家としての地位が高いのです。地熱からも分かるとおり、温泉大国でもあり巨大な温泉があります。同じ火山大国である日本も同じように地熱発電で電力を賄うことが可能なため、日本もそうしてれば福島の事故など起きませんでした。歴史にもし・・・はありませんが。そんな良い事づくめに思えるアイスランドですが、小国ゆえになにかしらの産業に特化する必要があり、アイスランドの場合は金融業でした。その金融業が発達してたおかげで外貨マネーが流入して非常に豊かになっていたのですが、それは諸刃の剣でした。

アイスランドクローネ通貨危機と預金封鎖、そして国家破産

アイスランドは金融業に特化し、高金利を謳って海外からの投資マネーを集めていました。当時のアイスランドクローネの金利は15%以上にも上り、 ”通貨価値が安定していれば” の条件下ではおいしい投資先としてユーロペッグ制を取り、投資を集めていました。当時のFXではEURISKを取引できるところもあり、ペッグ制と高金利が両立する、まさしくおいしい投資でした。しかしアイスランドの銀行は高い金利で投資マネーを集めるのですから、自分たちはより高い投資をしないと赤字になってしまいます。ゆえにアイスランドの銀行は、こともあろうにサブプライムローンなどの商品化証券に手を出していたのです。これらは確かに高金利やハイリターンをもたらす投資でしたが、結果的には超ハイリスクでもあった投資です。

そして2008年サププライムローン問題を発端としてリーマン・ショックが起こり世界的金融危機となり、主産業が金融業であったアイスランドはその余波をモロにくらって不良債権が膨大化、国家の危機に陥りました。ユーロペッグ制は崩壊し、アイスランドの自国通貨アイスランド・クローネは暴落して通貨危機を引き起こし、外貨建て債務が急増し銀行は虫の息、アイスランド政府が非常事態を宣言して国内の銀行を政府管理下におきました。国内のランズバンキ銀行や最大手のカウプシング銀行も国有化されて、預金者は自分の預金を動かせなくなってしまいました。実はこの預金者はアイスランド国民よりもアイスランドの高金利に惹かれた外国の預金者のほうが多数だったのです。

当時のアイスランドはロシアへ救済を求めたものの危機は収まらずIMFにまで支援を要請しましたが、実に780億円もののサムライ債がデフォルト(債務不履行)しました。リーマン・ショック時、日本は急激に円高が進んでおり、逆にアイスランドクローネは暴落し、アイスランドにとって円建て債券はとても返せるものではなかったのです。当時のISKJPYのチャート(下図)を見てみれば、だいたい3分の1に下落しています。つまりアイスランドクローネにとってサムライ債がおよそ3倍になったようなものです。返せるわけありません。

アイスランド政府は銀行を破綻処理して債務を帳消しにすることを検討しましたが預金者が多くいるイギリスやオランダからの大反発をうけ、国交断絶まで通告されました。しかし破綻処理をしなければアイスランド国民に大量の借金がのしかかることになるため、アイスランド国家そのものが崩壊する可能性さえ出て来ました。そこでアイスランド大統領が拒否権を発動、さらに2度もわたり国民投票を行い圧倒的多数でこれを否決、事実上借金を踏み倒しました。アイスランド国民から見れば、自己責任の投資で失敗した銀行と他国の借金をなんで自分たちが返さなきゃいけないんだ?って話ですから当然です。

預金封鎖、国家破産、その後のアイスランド。破産の成功例?

その後のアイスランドは金融危機と国家存亡の危機というダブルパンチで大分混乱しましたが、借金を踏み倒してチャラにしたことと、通貨安によって輸出産業が息を吹き返したことから、目覚ましい回復を見せます。EUに加盟せずユーロを導入せずに自国通貨を発行していたことも幸いし、通貨安による輸出産業の回復という恩恵が大きくデフォルトから実にたった4年で、自国の債券の格付けを投資適格まで戻したのです。しかしそこまで行くにはいろいろ大変な事業がありました。

中でも異例なのが、銀行を救済せず、納税者を保護し、主犯でもある企業役員や銀行家を実際に逮捕して責任を負わせたところです。欧米でも主要な金融機関が危機に陥っても税金でその救済をし、その負担を国民へ押し付けてます。国家破産ともなれば、主犯である彼らは国外へ逃亡し、膨大な借金が国民にのしかかって来ました。しかしアイスランドはその真逆であり、責任あるべきものに責任を負わせ、無責任な納税者には負債を負わせず、ダメな銀行を実際に破綻させたのです。国民資産を守り、負債を拒否した、国家破産としては成功例とも言えます。”大きすぎて潰せない” そんな銀行や会社がありますが、そんなもの延命させても悪影響しか産まないのは周知の事実。ダメなものはさっさと潰すことが最良の結果を生むという証明でもありました。しかしそういった大きすぎて潰せない会社をもっているのは国を動かしている支配者でもあるため、中々このような結果を生むことにはなりません。これはアイスランドが世界どころかヨーロッパの中でも小国であり、取るに足らない影響のない国だからこそできたことでもあります。日本がもしアイスランドと同様、預金封鎖や国家破産になったとき、このような状況になる可能性は低いでしょう。

2008年、中央銀行を国有化、通貨クローナが無価値となる。株式市場は停止、国家破産

2009年、内閣総辞職、総選挙。政府は銀行を救済するためにイギリスとオランダに月賦で5.5%の金利で15年間借金を支払い続けるという提案をする。

2010年、国民が抗議デモを多発。大統領が拒否権を発動、借金返済を拒否し、国民集会を宣言、国民投票を行い93%が拒否で可決。政府は危機を招いた責任者の捜査を行い、企業役員や銀行家の多くが逮捕。さらにインターポールまでが進出、犯罪グループに国外退去を命じる。憲法改正のための国民議会が選出、立候補者から25人の市民が選出、新憲法を国会へ提出。
2011年、国際通貨基金(IMF)の支援プログラムから脱出

引用記事・アイスランド危機からの教訓

アイスランド危機からの教訓:銀行を破綻させよ
【11月5日 AFP】

  アイスランドの銀行破綻とそれにともなう国家の混乱から3年経って、アイスランドの経済は持ち直しつつあることは、政府は銀行を破綻させ、納税者を保護すべきであるということを示している、とアナリストは語っている。

  北大西洋の島国は2008年10月、アメリカの巨大投資銀行のリーマン・ブラザースの破綻によって生じた世界的危機のあおりでその極端に拡大された金融部門が崩壊したため、三つの大銀行が破綻するのを経験した。

  これらの銀行は数週間の内に支払い不能に陥り、政府はそれら銀行を破綻させざるを得なくなり、IMFから22億5000万ドルの救済資金を借り受けせざるを得なくなった。

  その後の3年間に及ぶ厳しい緊縮財政で、ギリシャがデフォルトの淵に追いやられその他のユーロ圏の国家がプレッシャーを受ける現在の世界的な金融・経済危機にも拘わらず、アイスランドの経済は健全性を取り戻しつつある。

  「アイスランドから得ることのできる教訓は、納税者と政府が金融危機で抱えるコストをできるだけ保護する大切さである」とアイスランド銀行のアナリストであるブジャルキ・ベントソンはAFPに語った。

  「危機に対処するやり方が我々の選択ではなく、政府の無能力によって強いられたものだったとしても、このやり方は比較的うまくいったと言える」とベントソンは語った。

  アイスランドの銀行はその最大期には国家のGDPの11倍のアセットを持っていた。

  ノーベル賞受賞者のアメリカの経済学者のポール・クルーグマンはベントソンと同意見だ。
  「どこでも銀行を救済しその分を公的資金で賄っている時、アイスランドでは銀行を破綻させ、かえってその社会的セフティーネットを拡大したのだ」と、ニューヨーク・タイムズ紙の評論蘭に書いている。

  「誰でも国際的投資家らを懐柔しようと躍起になっている時、アイスランドでは資金の動きを一時的に統制した」と彼は語ったのだ。

  先週、レイキャブィクを訪問中、クルーグマンは、アイスランドはクローナを持っていたことが経済復興に幸いしたとし、経済のインバランスに対してユーロを採用することで守られるという考え方に警告を発した。

  「アイスランドの経済の復興は、ユーロ圏外にあることのアドバンテージを示している。ユーロ圏に参加することで安全性が高まるとう考え方は根拠がなくなった」とユーロ圏のキーとなるある国が公的資金問題に苦しんでいることを指して彼は語った。

  しかしアイスランドの例は今のギリシャやイタリアの問題に直接適用することはできない。 

  「ギリシャ、イタリアと2008年のアイスランドとの大きな違いは、後者は度を越した銀行の借入によって崩壊したことによる危機という問題だったが、前者はソブリンデット危機とそれがヨーロッパの銀行業務にまで影響を与えている問題ということだ」とベントソンは語った。

  「アイスランドでは、政府は危機以前には健全性を維持していた」と語る。

  2008年のメルトダウン期間中に在職していたアイスランドのガイアー・ハアルデ前首相は、銀行を破綻させ貸方がその損失を負うようにさせたことで正しいことをしたと主張した。

  「我々は国家を破綻から救ったのだ」とハアルデはAFPに対してこの7月語った。

  「現在の状況を見れば、そしてギリシャは言うに及ばず、アイルランドと比較して見ても明らかである」と彼は語り、二つのEUの問題ありの国家は、「我々はやらなかった過ちを犯した・・・我々は銀行の外部の負債は保証しなかった」と語った。

  国際的救済パッケージで救われ復興中のアイルランドやラトビアのように、アイスランドは厳しい緊縮財政の道を取ったことで今やその努力の結果を見ている。

  アイスランドの中央銀行は11月2日、金利を4分の1ポイント上げて4.75%とした。これはその他の発展途上国が今の危機の最中に借入れコストを削減しているのと際だった違いだ。

  2011年の前半期の経済成長は2.5%だと言われていて、2011年全体では3.0%になると予想している。

  アリオン銀行のアナリストであるデイビッド・ステファンソンはAFPに対して、「アイスランドは他の国々と比べてその経済(サイクル)で異なった状況にある」ために、金利を上げたのだ、と語った。、

  「アイスランドの中央銀行は、似た状況下にある他の中央銀行が金利を低いままに抑えたりむしろ下げたりできるのは、インフレ懸念が比較的低いと予想されると考えているからだ」と語った。

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