第1次ベビーブームの団塊の世代にこそ大きな格差(団塊格差)がある

団塊の世代とは

1947~1949年の間に急激に出生率が高くなった人たちを団塊の世代という

団塊の世代の出現

”団塊の世代” とは他の年代よりも出生数が極めて多い1947~1949年の間に生まれた人たちを団塊の世代のことを指します。20世紀の出生数を表した上の図を見ればわかるように、団塊の世代は他の年代と比べてもきわめて同年代の人が多いことがわかります。その数の多さで、戦後日本の発展に大きく影響を与えた世代でもあります。

団塊の世代の就職

この団塊の世代が社会人となる1960年ごろには集団就職列車というものがあり、その移動によって多くの人が都市部に上京しました。このとき多くの団塊の世代が上京したために、地方の人口が激減し都市部の人口が増加しているする要因を作ることにもなりました。

団塊の世代の結婚

この団塊の世代が結婚適齢期を迎えた1970年代は、多くの団塊の世代が結婚・出産をしたために1970年代の出生数も極端に増加しました。団塊の世代の子供たちということで、1970年代に生まれた人たちを ”団塊ジュニア” とも呼びます。

団塊の世代の家庭

団塊の世代は上記のように集団就職列車で多くの人が地方から都市部へと上京しました。そして、多くの団塊の世代の人たちがそのまま都市部に家庭を持ち、地方の親と別れて住むことになります。このことから、団塊の世代は自分たちと子供だけの家庭である ”核家族” であるケースが非常に増えました。

団塊の世代の退職

団塊の世代の多くは、2007年ごろに還暦を向かえ退職する人が大勢出ることになります。すると企業には大人数の退職者が出てしまうために人員不足問題、いわゆる2007年問題が起こることになります。そのため企業は今まで絞ってきた新卒採用を大幅に増やすことになり、退職と新卒の環境を大きく激変させることになりました。

このように ”団塊の世代” というのは戦後の日本に大きく影響を与えた世代でもあります。彼らが日本の成長に大きく貢献したことは間違いありません。しかしその人数の多さが今度は社会保障の問題や年金・介護といった問題をも生み出し、日本の正の面だけではなく負の面にも多大な影響を及ぼしています。そして彼らの中にも非常に大きな格差が広がっています。

団塊の世代は中流から下流に落ちたと感じている

団塊の世代の人たちは一時は中流志向が強かったが、格差社会化して下流になったと感じている

上の図は、「団塊格差」という本にある団塊の世代の男女各2000人を対象にインターネットで調査し、2,156名から有効回答を得た結果 「自分の階級はどこか」 という調査です。団塊の世代は戦後すぐの貧しい時代に生まれたために子供時代は貧しい下流と感じていましたが、高度経済成長のおかげで豊かになりバブル時代の1990年には下流と感じている人はほとんどいませんでした。しかし格差社会が拡大している21世紀になると、この傾向はまた逆戻りをはじめます。

1990年から21世紀にかけてはバブル経済の崩壊で景気は悪化し、賃金削減やリストラなどの嵐が団塊の世代を直撃します。そのため多くの団塊の世代の生活には大きなダメージが与えられ、高度経済成長の恩恵を受けて裕福になったはずの団塊の世代もどんどん貧しくなり、自分は下流になったと感じているのです。

団塊の世代の所得格差

高度経済成長期を謳歌してきた団塊の世代でも大きな格差が生じている:団塊格差

上の図は、団塊の世代の人の所得分布を表したものです。団塊の世代はすでに高齢であり、年功序列によって比較的高い賃金を得ているはずの世代です。しかし実際は、20%以上の人が年収300万円以下であり、中には年収150万円以下の ”高齢ワーキングプア” の人も10%います。日本の高度経済成長期を謳歌し富を蓄えてきたはずの団塊の世代にも、これほどの貧困層が存在しているのです。

年収300万円以下の人が20%もいる一方で、年収700~1000万円の人たちも同じぐらいの割合が存在しています。特に年収1000万円以上の人も10%以上いるのです。本来は年収が高くなるにつれてその割合も減っていくものですが、この世代はどうやら違うようです。年収が低いところと年収が高いところに偏っているのです。つまり団塊の世代は他の世代よりも同年代の格差が非常に大きいということです。これは平成不況によるリストラなどで一気に貧困層に落ちてしまった人と、既得権益を守りきった人の差が大きいと考えられています。

団塊の世代の遺産格差

戦争を経験した両親をもつ団塊の世代でも、大きな遺産を相続した人は多い

上の図は団塊の世代の人が、両親の遺産相続でどれだけの資産を手に入れたかを表す図です。1947~1949年生まれの団塊の世代の両親は戦争を経験しています。日本の戦争を説明するときは、 ”敗戦で焼け野原になり何もかも無くなって一からの出発だった ”と言われることがよくあります。もしも、本当にそうなら、団塊の世代の親たちはほとんど資産をもっていなかったはずですから、相続する遺産などもそんなに多くはないでしょう。

しかし50%近くの人がほとんど遺産をもらえなかったのに対し、一部では5000万とも1億円ともいわれる巨額の遺産を手に入れているのです。そう、団塊の世代の遺産相続にも大きな格差が生じているのです。これは戦争時代、多くの庶民は預金封鎖や国債のデフォルトなどで資産を没収されて文字通り一文無しになりましたが、一部の富裕層はきっちりと自分たちの富だけ確保していた結果ではないかと推測されます。

団塊の世代の貯蓄格差

団塊格差・・・老後を豊かに暮らすには数千万の貯蓄が必要といわれる中、4割の人が貯蓄500万に満たない

上の図は、団塊の世代の人の貯蓄額分布を表したものです。日本の高度経済成長の恩恵と年功序列によって年々賃金が増加していった状況にあった団塊の世代は、 詐欺師が狙っているようにさぞかしたんまり溜め込んでいるというイメージがあります。しかしそのイメージと実態は大きく違いました。

確かに20%ほどの人は2000万円以上の巨額の貯蓄を溜め込んでいます。しかしおおよそ40%の方々は貯蓄が500万円に満たないのです。しかも8%の人はこれから還暦を迎えて仕事が無くなる状況なのに貯蓄がゼロなのです。貯蓄格差で貯蓄ゼロの世帯がどんどん増えているデータがありましたが、それはこの団塊の世代も例外ではありませんでした。相次ぐ賃金カットやリストラの嵐、税金・保険料の値上げは団塊の世代の貯蓄を確実に蝕んでいたのです。

これからの税金・保険料の値上げを考慮すると退職した後に悠々自適の豊かな老後を過ごすには(年金・退職金を除いて)数千万円の貯蓄が必要といわれていますが、このデータを見ると、悠々自適の豊かな老後を過ごすことができる団塊の世代の人は、わずか2割ほどにしかなりません。自由な時間や第2の人生とか言われていますが、多くの人の将来は暗いでしょう。

団塊の世代の退職金格差

高度経済成長期に散々会社に忠誠を誓って働いていた団塊の世代だが、半数の人の退職金は500万未満、退職金が全く無い人が3割にものぼる

上の図は団塊の世代の人の退職金分布を表したものです。高度経済成長期に散々会社に忠誠を誓って、身を粉にして働いていた団塊の世代ですが、その半数の人の退職金は500万に見たず、さらに退職金が全く無い人が3割にものぼるのです。一方で、貯蓄額と同様に3割ほどの人が2000万円以上をもらっています。団塊の世代は所得格差、遺産格差、貯蓄格差などが他の世代よりも明らかにひどいものでしたが、この退職金格差も同じように大きな格差が生じています。これは所得格差と同様に、平成不況によるリストラなどで一気に貧困層に落ちてしまった人と、既得権益を守りきった人の差が大きいと考えられています。

以上のことから、団塊の世代は
「所得格差」 「遺産格差」
「貯蓄格差」 「退職金格差」
このように多くの面で
一番大きな格差が存在する世代です

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