弁護士や会計士は食えなくなり、医者のみが勝ち組として残ったが・・・
昔は文系の花形といえば弁護士、理系の花形といえば医者でした。
どちらも職業を選択する上で年収が一番高い最上位の職業として認知されていました。
頭のいい人や金持ちになりたい人などは文系のほうであれば弁護士、次点で会計士、理系であれば医者というようにルートが決まっていたようなものです。
しかし今の弁護士の年収はあまり期待できません。
- 昔の弁護士の年収は3000万円?
- 現在の弁護士年収は減少傾向
- 年収は医者の一人勝ち
昔は弁護士や医者になれば年収3000万円は当然
弁護士や医者というのは他の職業と比較しても非常に高い年収を誇っていました。
どちらも資格を有するものであり、一度取得すれば一生食いっぱぐれはないと言われたものです。昔はその資格を取って事務所を開業すれば年収3000万円は当然と言われており、その華やかな職業にあこがれて法学部や文学部などを志望する学生もたくさんいました。
しかし年々と変化する状況で、その様相が変わってきてしまいました。
減少傾向の弁護士、会計士と安定している医者の稼ぎ
下記は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 の調査結果による弁護士、公認会計士、医師の年収変化です。
上記はここ10年あたりの弁護士、会計士、医者の平均年収の推移をグラフにしたものです。
ご覧のように会計士の年収は弁護士や医者にはるかに及ばず、弁護士の平均年収も600万円台にまで下がってきてしまっています。これをみても弁護士の稼ぎはさがる傾向が続いており、逆に医者は1000万円以上でずっと安定していることがわかります。
弁護士の調査自体は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 の調査結果によるものですが、調査母体が少ないために統計にばらつきがあるようです。
弁護士の年収は急激に下がっている
図は日本弁護士連合会が発表している弁護士白書2015年アンケートの結果を図に表したものです。
特に2010年代になってからは急激な落ち込みを見せています。
収入は売上高であり、そこから経費を引いた所得は年収と捉えればいいでしょう。
中央値とは、上から多い順に並べた際に、全体の真ん中になる人の値です。所得の中央値を見ると2006年の1200万円から2014年には600万円となんと10年も経たずに半額になってしまっています。
一概に稼げなくなったわけではなく、一部には数千万、あるいは億を稼ぐ人もいる業界であることは確かです。しかし反対に、年収200万円、300万円といった低所得者も少なくないのです。日本最難関の資格を合格してきたエリートとしては報われない実態になっています。
受給のバランスが崩れた
会計士や弁護士の年収が低くなっている原因はなんといっても需要と供給のバランスが崩れてしまったことです。
昔は弁護士になるには超難関と言われた司法試験に合格しなければなりませんでした。当時の司法試験の合格率はなんとわずか3%でした。
受かるのはほんの少数に過ぎなかったわけで、そこを通り抜けた人たちにとってはライバルがほとんどいない状態だったのです。そのため仕事が途切れることもなく、一生安泰と言われたのも納得です。
法科大学院増加で弁護士も急増
しかし2002年に閣議決定された「司法制度改革推進計画」で法曹人口を増やす政策が決定されて以降は、法科大学院の増加により今では30~40%くらいで合格でき弁護士になることができてしまっています。
その結果、弁護士の数が急激に増えてしまい需要よりも供給が増さってしまったのです。
先述した「弁護士白書2015」では全国の弁護士人数は2006年に比べて2014年は約1.6倍にまで急増しています。これは、政府が進めた政策によるものです。このため弁護士の資格をとったのに仕事がない、会計事務所に入りたくても空きがない、実績が積めないからますます仕事にありつけない、という貧乏弁護士が多数出てしまったのです。
実際の弁護士はカツカツ
上述のように弁護士の数が増えすぎたため年収崩壊が起きています。
しかし弁護士になるためには司法試験を突破しなければなりません。
一発合格できる人も例外にはいますが、ほとんどの人が大学や大学院にまでいって勉強漬けの毎日をおくります。
当然バイトなどできませんので、奨学金を借りる人が大半となり、弁護士になったときには数百万円の借金を背負ってのスタートとなります。
弁護士になった時点での俺の借金の金額教えてあげようか?800万だよ、800万。奨学金500万円と司法修習中に借りた300万円。今も月に奨学金45,000円を返済中で、今年からは司法修習中の300万円を年賦で30万円ずつ返さなきゃならないんだよ。ちなみに、みんなが思ってるほど儲かってないよ。
— オタ弁さん (@otalawyer) 2019年3月7日
医学部を目指す学生は増加、医者の一人勝ち
そんな情勢を反映してか最近は大学の文学部の応募者は減り、医学部への入学希望者が増加しています。上記は文部科学省の発表している学校基本調査を基にここ10年の志願者数の変化を表した図です。
医学部一人勝ち、法学部激減
10年前は10万人程度だった医学部の進学者数はここ10年間でプラス5万人近くの1.5倍になっています。
しかし弁護士の登竜門だった法学部の志望者はマイナス6万人、文学部にいたってはマイナス8万人にまで減少しています。
少子化だから・・・と言い訳したくても、実際に医学部が増加している以上、学部別の人気度が2極化どころか医学部の一人勝ち状態になっているのです。
お金目当ての医学生が増えた
ある雑誌でインタビューした国立大学医学部の学生の話によると 「同期のうち、きちんとした患者を救いたいという動機があるのは20%くらいで、30~40%は親の影響、残りの3~4割ちかくにわたる学生が金持ちになりたいという動機の人たち」 ということです。
弁護士や会計士ではもはや金持ちになれないとわかった学生たちが押し寄せているのです。
医師免許だけは破産しても剥奪されない
またとんでもない理由もあります。弁護士や会計士という士業というのは自己破産をしてしまうと国家資格が一時停止してしまうのですが、なんと医者に限っては自己破産をしても医師免許が剥奪されることはないのです。
さすがに犯罪などを犯せば別ですが、昨今の意志不足や団塊の世代の高齢化による医療業務の増加もあって、医師が食いっぱぐれることはほとんどなくなっています。
医者になるのは先行投資が巨額
ただし医者になれば本当に一生安泰、一生勝ち組でいられるというのは微妙です。
勤務医の年収はそれほど高くない
まず最大の魅力である稼ぎですが、実際のところ多くの医師が所属する大学病院などの勤務医の場合は給与は600万円ほどでなかなか1000万円に達しません。
年収3000万円というのは独立開業した開業医の金額です。ほとんどの人は勤務医からスタートします。
金が足らずに他の病院にバイトにいったり、当直のバイトをする人もいるぐらいです。
また知っての通り勤務時間は不規則であり、患者の状況によっては夜勤の後に昼勤などをすることもざらにあります。朝早く5時に勤務を開始して午前の事務作業、午後の会議をこなして帰ろうとしたら急患がきたことで手術を行い、終わるともう夜中という勤務を毎日続けなければいけません。
時給換算だとサラリーマンと同じ?
いくら稼ぎが良いと入っても勤務時間の不規則性や拘束時間の多さを見てみると、時給換算では普通のサラリーマンと変わらなかったりもします
。にもかかわらず仕事は激務であり、責任も重大です。1つのミスが医療事故につながり訴訟につながって全てを失うリスクと隣合わせです。また日々進歩する医療技術や知識に対応しなければなりません。
勉強と勤務を同時にこなさなければいけないハードワークをこなす必要があります。
なにより先行投資が高い
また医者になるための ”先行投資” も他に比べて突出しています。医大の学費というのは、とにかく目が飛び出るようなとんでもない高額な費用がかかります。
医大の学費は医大が6年であることもあって最低でも2000万円、帝京大や東邦大などは6000万円もかかってしまいます。またこの他にも1,000万円 単位の ”寄付金” を要求されることもあり、さらに増額します。
また、学費が抑えられている国公立大学の医学部でも大学が独立財政化されてきているので、医学部の授業料は年々増加傾向にあり、1,000万円を超えるものもあります。
大学名 | 学費 |
東邦大学 | 5727万円 |
帝京大学 | 4919万円 |
東海大学 | 4211万円 |
北里大学 | 3800万円 |
独協大学 | 3730万円 |
日本大学 | 3470万円 |
杏林大学 | 3295万円 |
昭和大学 | 3130万円 |
順天堂大学 | 3050万円 |
関西医大 | 3014万円 |
東京慈恵会医大 | 2250万円 |
日本医科大学 | 2840万円 |
東京医科大学 | 2688万円 |
自治医科大学 | 2260万円 |
慶応大学 | 1928万円 |
寄付金を要求する医大もある
2018年に受験生への明らかな差別が発覚した東京医科大学に代表されるように、医大の受験では大学側の操作が多く行われています。
ズバリいえば、寄付金を払った家庭の学生は優遇されているのです。
寄付金を払う学生が特別扱いされる分、ただでさえ狭い枠はさらに減らされており、合格するにはより高い学力が必要となります。
報告書によると、第三者委は受験生の保護者への聞き取りや、臼井正彦前理事長=贈賄罪で在宅起訴=のパソコンに残されていたメールデータ、臼井前理事長が作成した、ある年の入試の受験生と寄付金などに関するメモを分析した。
メモに記載された11人のうち、1人は正規合格し、残りの10人はいずれも補欠の繰り上げで入学。10人については「1000~2500」の手書きの記載があり、実際に受験生の保護者や関係者が300万~3千万円を寄付していたという。メモに書かれた数字と、寄付額が一致した受験生が5人、寄付額が上回った受験生が2人いた。また、計7人については、入試で得点の個別調整が疑われたという。
朝日新聞:東京医科大、寄付した7人加点か 補欠で合格 第三者委
開業医になる費用は億を超える
この途方も無い金額はお金持ちの家庭で無ければ捻出することができないので、必然的に金持ちしか医大に行けないことになります。
さらに念願の医者になっても先述のとおり勤務医ではそれほど儲からず、儲かる開業医になろうとしてもある程度の実績を必要とする上に開業するための様々な支出がのしかかります。
開業医院設立費用は安くても5000万円
建物を建てるための不動産、建物の建設費用、医療器具、医療事務や看護師などの人件費、いろいろかかる費用は安く見積もっても5000万円、億を超えるのも珍しくないとまで言われています。
そのためいざ開業医になっても10年以上も学費ローン、開業資金のローンに追われる医師というのは珍しくありません。
医者になる前の先行投資も巨額な上に、開業医になるための先行投資もまた巨額なのです。実際のところ医大の先行投資をローンを組むことなく親に支払ってもらえ、開業医になる上でも親の不動産、建物、医療器具を継承できる医者の子供が一番儲かる医者なのです。
日本の労働者の年収はここ10年で100万円くらい減っているひどい状況ですが、それは勝ち組と思われていた士業の分野でも例外ではありませんでした。
単なる雇われ弁護士、勤務医ではそれほど高い年収になるのは難しく、リスクをとっての開業を視野にいれないと高い年収は厳しい時代となっています。
- 弁護士・会計士の年収は右肩下がり
- 弁護士になるためにローンを抱える学生は多い
- 医者だけは年収は変わらない
- 医学部は受験数増加、法学部は減少
- 医学部学費は6年で数千万円
- ただ勤務医の年収は高くない
- 開業医なら年収3000万円も普通
- 開業医になるのは5000万~億の設備投資
最終的な費用を考えると、ただの普通の学生が医大にはいって医者として勉強して、自分のクリニックを開業して年収3,000万円になるには医学部学費と開業費用をあわせても、やはり億の投資が必要になりますね。
年収3,000万円になるといっても税金で半分は持っていかれますし、億のローンの返済にはやはり10年単位の期間がかかります。
一方、親に医大の学費を出してもらって、親の医院を継承すれば、それらの費用がほとんどかからないわけです。お金持ちの医者が自分の子供に自分のクリニックを引き継がされるわけです。
夢がなくなります。