TRY (新トルコリラ) は歴史的にインフレに苦しめられている超高金利の通貨

トルコ共和国の詳細データ

正式名称トルコ共和国
人口7493万人
面積783,562km2(世界第37位)
首都アンカラ
宗教イスラム教
主要産業工業、小麦、とうもろこし、大豆、金融保険不動産業、サービス業
名目GDP1兆4,435億USD(2013年)
一人当たりのGDP18,874USD(2013年)

TRY (新トルコリラ) の特徴

TRYとはトルコで使われる通貨である

TRYとは新トルコリラといってトルコ共和国にて使用される通貨のことです。なぜ ”新” がつくかというと、後述しますがトルコは2005年ま同じ名前のトルコリラを使っていましたが、あいつぐインフレ打開のために新しいトルコリラを発行したのです。そのため現在使われているのが新トルコリラ、2005年まで使われていたのが旧トルコリラとなっているのです。トルコの英語表記が TuRkey であり、リラの表記が Lira となることから本来はTRLと表記されるのですが、TRLは旧トルコリラで使われてしまったのでTRYと表記されるのです。

トルコ共和国の国旗トルコ共和国の地理

世界でも類をみない高金利

TRY(新トルコリラ)の最大の特徴といえば世界でも類をみない政策金利の高さです。なんと金利は15%以上という日本のサラ金並の水準を誇り、日本のスワップ金利目当ての投資家からは絶大な人気を持っています。なぜこんなにも金利が高いかといえば、インフレがとても高いことの裏返しでもあるからです。トルコ共和国は歴史的にインフレに悩まされており、ドイツのように強い警戒感をもっています。そのためインフレ抑制のためとインフレに対するトルコ人の恐怖感のためにトルコの金利は高い状態を保っているのです。

潜在的な能力を秘めているVISTAの一角

ポストBRICsといわれる新興国の成長株を称したVISTAの “T” がトルコを指しているように、トルコは将来を嘱望されている新興国の1つです。トルコはアナトリア半島の99%を占めるかなりの国土を誇っており、その面積に比例するように人口も8,000万人とかなりの人数を有しています。そしてその人口は若年層が非常に多いのです。少子化に悩む日本とは対称的であり、労働力不足に悩まされることもなく今後も安定した成長が見込めるということです。

21世紀になったようやく日の目を見た

トルコは20世紀の間は、経済が安定せずに延々と悪性のインフレに悩まされてきました。年間6000%のハイパーインフレになったり、インフレかと思えば一旦デフレに陥ったりしました。インフレが激しくなり何度もデノミを行ったりして国民の資産は何度も紙くず同然まで減らされてしまったのです。2001年には金融危機を起こしてIMFの管理下に入るなど不遇の歴史を送ってきました。そうして2005年頃からようやく経済が安定してきたのです。一度地獄を味わってきたトルコはとても強く、潜在的な能力を如何なく発揮して、相当の経済成長を遂げているのです。

世界一の親日国トルコ

トルコは地理的に日本から非常に離れているのですが、世界一ともいってもいいほど日本に好意的な国です。それは長らくトルコを苦しめてきた ”共通の大敵:帝国ロシア” を日本が日露戦争で破ってくれたことによる親近感が強く影響しています。当時の日本総司令官にあやかってトウゴーという名前をつけるトルコ人も多くいます。また、それだけではなく100年以上前のエルトゥールル号遭難事件は長く日土友好関係の起点として両国の関係者に記憶されています。トルコ人が公的な場で日本人に対して日土友好の歴史について語るとき、必ずといっていいほど第一に持ち出されるのがエルトゥールル号遭難事件を語ってくれます。その親日関係は 「イラン・イラク戦争時のトルコ政府の救出」 にも現れています。

参考 : 日本とトルコの関係(FLASH)
参考 : エルトゥールル号遭難事件
参考 : イラン・イラク戦争時のトルコ政府の救出

TRY (新トルコリラ) のリスク要因

歴史的にインフレが激しい

TRY(新トルコリラ)を導入したことによって今では安定しつつありますが、トルコ共和国は悪性のインフレに苦しめられてきました。トルコは年間6000%のハイパーインフレになったこともあり、この30年間は、まともな経済活動ができなかった時期のほうが長かったのです。そのため経済・政策などのノウハウが不足しており、いつまたハイパーインフレに戻らないとも限らないのです。金利が15%と高い状態なのは、それだけのリスク要因があるからです。説明するまでもないですが、インフレになると相対的に通貨の価値は下がるのですから、TRY(新トルコリラ)に投資していれば大損します。

極めて流動性が悪い = エキゾチック通貨

世界的にもTRY(新トルコリラ)の流動性は極めて低いものがあります。その流動性の悪さから、マイナー通貨ではなくエキゾチック通貨に分類されているのです。エキゾチックとは、マイナー通貨よりもさらにリスクが高く流動性が悪い通貨のことをさしています。そのためTRY(新トルコリラ)のレートはSAXOシステムを要しても表示されないこともありスリップページなどかなりあります。それゆえ、一旦下落すると商いが薄いことで一気に暴落します。サブプライムローン時にTRYJPY相場は実に8%も暴落したのです。

調達コストが高くて証拠金率が高い

世界的にもTRYの流動性は低いものがあり、各FX業者もTRYには高いレバレッジをかけることができません。これはTRYの調達が難しいということと、ハイリスクな通貨をハイレバレッジで投資させてはいけないという投資家保護の観点によるものです。そのためTRYは証拠金率が高く、取引に4%~20%近く証拠金が必要となっています。また、2008年の金融危機のような異常事態が起きたときに、証拠金率がさらに高くなることがあります。事実、2008年には、kakakuFXなどのSAXO業者でTRY(新トルコリラ)の証拠金率を4%から8%ほどに引き上げたことがあります。そのためハイレバレッジの取引はできません。現在でもセントラル短資FXなどトルコリラが取引できるFX業者でレバレッジは10倍と低く設定されています。

デノミネーションの過去

トルコは2005年に旧トルコリラ:TRLを廃止し、新トルコリラ:TRYを発行しました。その際のレートは100万旧トルコリラ=1新トルコリラになります。このような通貨の単位を切り下げることをデノミネーションといいます。インフレで金額表示が大きくなると、表示するのが面倒なので通貨単位を切り下げたのです。たとえば旧トルコリラのままでレート表示をすると TRYJPY = 85,000,000 となってしまいますから見にくいですね。通常デノミを行うことで通貨価値は暴落しますので国内の負債などを返すときにも使われます。大量の負債を抱えている日本もいつデノミが起こってもおかしくないですね。

2010年代から地政学リスクが急上昇

トルコは地中海に面した半島すべてが国家となっていますが、その東にはあの国と面しています。そう、シリアとイラクです。知っての通り2014年ごろから台頭したISことイスラム国によって両国は崩壊寸前になりました。シリアは内戦状態になり、イラクもメチャクチャです。そして難民が大量に発生し、隣国トルコに流入しています。

トルコそのものが内戦や戦争状態にないのだから大きな影響はないと考える人もいますが、2016年7月には軍事クーデターが起こり、失敗しています。日本ではほとんど意識されませんが、クーデターがこの現代において起こっている国なのです。普通のビジネスマンはクーデターが起こったり、隣国が戦争状態にある国にはできるだけ行きたくないのが心情です。当然企業も撤退が増え、経済活動も順調にいくはずがありません。新トルコリラも下がりっぱなしなのが現実です。

反米に傾く独裁者エルドアン

他にもリスクがあります。独裁者エルドアン大統領です。独裁者と選挙で選ばれる大統領は矛盾した表現ですが、2017年4月17日に憲法改正を問う国民選挙が行われ、議院内閣制から大統領制に移行する制度改革、首相職の廃止、大統領が閣僚の任命や非常事態令の発令の権限のほか司法にも影響力をもつようになるなどエルドアン大統領に権力が集中する結果となり、ほぼ独裁といってもいいくらいの状況になっています。

このエルドアン大統領、かのオスマン・トルコ帝国復活を意識しているのか非常に強気の姿勢を崩さず、中東の支配者アメリカに対抗して、反米思想を露骨に出すようになりました。2016年のクーデターを主導したのがアメリカに住んでいるギュレン師であると主張し、師の身柄引き渡しを巡って外交問題が今も起こっています。また反米を主張するために仇敵であるロシアに接近するほどの行動を見せています。

さらにややこしくなっているクルド問題

トルコのリスクがさらに高くなるのがトルコ・イラク・イランにまたがるクルド人問題です。クルド人は世界最大の国を持たない民族であり、トルコ・イラク・イランの国境地帯におよそ3,000万人が住んでいます。このクルド人、ただでさえ住んでいる国の政府と自治権や独立でもめることが多かったのに、それに拍車をかけたのがあのIS:イスラム国の台頭です。

イスラム国は孤立無援のならずもの連中のため、イラク政府、シリア政府、アメリカ、ロシア、そしてクルド人の共通の大敵です。宗教的にはスンニ派のためシーア派盟主のイランにとっても敵になります。そのためこのクルド人の精鋭部隊ペシュメルガもイスラム国との戦闘に加わりました。このペシュメルガにはともに戦うアメリカから武装や資金などが潤沢に支援されています。そのため地上最強部隊とも言われ戦闘で活躍し、イスラム国を追い詰めました。イラクのモスルなどはイスラム国が支配していましたが、その武力でクルド人部隊が奪い返し、イラク政府にかわって支配をしている状況にあったのです。

しかしこれはイラク政府にとっても隣国トルコ政府にとってもおもしろくありません。自らの国の一民族であるクルド人が強くなってしまえば、自国から独立されかねません。そんなことになれば国の一部がなくなりますから国力は大幅に落ちますし国際社会からの信用も失います。イスラム国がほぼ崩壊した2017年には、共通の大敵がいなくなって、それぞれ共に戦っていた部隊同士の内戦が勃発しています。2017年10月には独立投票を行ったためイラク政府軍が出動し戦闘状態になりました。トルコも同様です。

とにかく今中東はイスラム国がいてもいなくても情勢が非常に不安定になっており、隣国トルコの情勢も不安定な状況がずっと続いています。さらに世界の経済をリードするアメリカとの取引を停止するようなことをしているトルコは、グローバル経済の成長とは切り離されかねない方向に進んでおり、将来の見通しはけっして明るくありません。新トルコリラの投資もとても難しくなっています。歴史に学ぶのであれば、インフレが強く、経済が不安定な国の通貨は下がっていく可能性が高いです。トルコリラへの投資は非常にリスクが高いということを認識する必要があります


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TRY (新トルコリラ) の政策金利

トルコ共和国の政策金利動向

トルコ共和国の政策金利はここ数年は8%前後で安定しています。これは国内のインフレが安定してきているということです。2001年のIMFの介入によってトルコのインフレは安定するようになりましたが、それまでは悪性のインフレが延々30年も続いていました。2001年の金利が100%近いことからもわかるように20世紀のトルコは金利が6000%にもなるなど経済が崩壊しかかっていたのです。この戒めを受けてトルコ政府もインフレには強い警戒感をもっているのでインフレ抑制とトルコ人の恐怖感からもトルコの金利は高い状態を続けています。しかし2008年の金融危機では、南アフリカランドとほぼ同水準まで下げたこともありました。流動性やリスクの面からも南アフリカランドに投資するよりリスクが高いといってもいいでしょう。

またリーマンショック以降、景気刺激のためやインフレの落ち着きから利下げが断続的に行われ、金利は大きく低下しました。さらに2010年代になっての中東混乱によるシリア内戦、過激派組織ISISが隣国のイラク・シリアで台頭、さらに国内で領土的・民族的問題をかかえているクルド人がISISと衝突し、欧米諸国からの空爆、それら戦争から逃れるためにトルコに流入してくる難民問題など、中東が混乱すればするほどトルコにも火の粉が降りかかってくるため投資環境は決して良いとはいえません。さらにこれら問題に対処すべきエルドアン大統領にも問題が多くなるなど、金利の面からもリスク要因からも投資価値は低くなったと言わざるを得ません。2017年にはアメリカとトルコの間でビザ発給が停止になるなど、外交問題も噴出しています。

TRY (新トルコリラ) の投資情報

トルコの情報はマネースクエア

トルコリラの情報はFX会社が提供しています。マネースクエアでは専用のトルコ情報配信サービス【週刊2分でわかるトルコ】を提供しています。週刊の配信ですが、トルコ現地の通貨安の状況や大統領の政治情勢、近隣の中東情勢におけるトルコの現状など、普段のニュースではわからない現地の情報や解説などが受けられます。他にも【注目!高金利通貨】という動画配信サービスを行っています。マネースクエアのアナリスト・八代和也が、豪ドル、NZドル、トルコリラの展望をわかりやすく解説。旬なトピック、押さえておきたい指標やイベント、今後の見通しなどを伝えています。

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トルコリラの相場情報

高金利通貨というのはその性質上、低金利の通貨を借りて高金利通貨を買うというキャリー・トレードがされやすい傾向があります。それは投資資金が順調に入ってくる反面、リスクが明確化すると一気に資金が引き上げられて暴落しやすい性質に帰結します。トルコリラもその例に外れることなく下落しやすい傾向があります。下図はTRYJPYの2000年からの15年間の相場チャートを示しています。3年区切りではおおよその高低差が10~20円となっていますが、リーマン・ショック時においては99.67から52.65まで実に50円近く下落し、通貨価値は円に対しておよそ半分になってしまいました。しかしこの下落、驚くべきことトルコより点金利の南アフリカランドよりは小さかったのです。どちらもエマージング通貨でハイリスクですが、南アフリカランドよりも高金利で暴落がやや小さいことは投資価値を見いだせる情報でしょう。ただし、トルコは歴史的に慢性インフレを抱えており、何度もデノミや通貨価値の下落を繰り返しています。その証拠にリーマン・ショック後、円安が続いているのですがTRYJPYは上がるどころか下がっています。これはトルコリラが円以上に通貨価値を下げていることにほかなりません。トルコはインフレに加えて、領土的・民族的問題、大統領の政治的問題、中東の地政学的問題などたくさんの問題を抱えています。リスクが高いことは言うまでもありません。

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TRY (新トルコリラ) の祝祭日

1月1日元旦
4月23日国民主権と子供の日
5月19日アタテュルク記念と 青少年とスポーツの日
8月30日戦勝記念日
10月29日共和国記念日
イスラム暦ラマダーン祭 初日の13時から3日半
犠牲祭 初日の13時から4日半
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