ドルペッグ切り上げ前に値上がりを見込んで中東通貨を買うべき?
中東通貨とは?
FXではSAXO業者のおかげで世界各国の通貨を取引できるようになりました。世界各国の通貨はドルや円のように自由取引ができないものが多く、主軸通貨と固定相場を形成しているところが多いです。中でも固定相場としてFX投資家に注目されているのが中東通貨です。中東とは日本では”アラビア半島”というイメージが強いサウジアラビア周辺国の国の通貨です。中東といってもあの辺はイスラエル・パレスチナ問題などで紛争が絶えず、国境、国名もいつ変わるか分からない不安的な地域なので自国通貨があっても取引できない国があります。主にイラク、イラン、レバノン、シリア、ヨルダンなどの通貨は取引できません。
取引できる中東通貨
GCCの中東通貨
中東通貨として取引できるのはGCC(湾岸協力会議)に参加している6カ国の通貨です。GCC(湾岸協力会議)に参加しているのは中東の盟主:サウジアラビアを筆頭にオマーン、アラブ首長国連邦、バーレーン、カタール、そして”中東の笛”でおなじみのクウェートになります。この6カ国の通貨がいわゆるドルペッグ制を採用した中東通貨と呼ばれるものです。
GCCとは
GCCとはサウジアラビア、オマーン、アラブ首長国連邦、バーレーン、カタール、クウェートなど中東のお金持ち国で形成される中東・ペルシャ湾岸地域における地域協力機構になります。要はお隣同士協力しましょうという集まりでEU(欧州連合)の中東バージョンと捉えてもらってもいいかもしれません。
GCCは統一通貨を導入予定
GCCに参加している6カ国はEUのユーロのように機構に参加している国同士での共通通貨を作ろうをしています。共通通貨は「カリージ(Khaleeji)」と呼ばれ2010年までに導入を検討しているようですが、オマーンが反対しているなど見通しは不透明です。
トルコ、イスラエルも中東
一応述べておきますが、トルコ、イスラエルも地理的には中東に属しているのでトルコ、イスラエルの通貨も中東通貨と呼ばれます。しかし主に「FXでの中東通貨」はGCCに参加している6カ国のドルペッグ制採用通貨のことを指します。
中東通貨が注目されるのはドルペッグ制の廃止の可能性
米国との関係が深い
中東は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教と3つの宗教の聖地があり歴史的にも紛争が多く落ち着きのない地域です。結果的にこの地域は米国の軍事力による抑止力で今の安定を保つようになりました。また、地域最大の産業である原油を一番輸入するのも米国なのでこの地域の国は米国に依存することが多く米国ドルとの固定相場を形成しています。
いわゆるドルペッグ制ですね。
ドルペッグ制は廃止方向
なぜこの中東通貨がFX投資家に注目されているかというと、近々このドルペッグ制が廃止される可能性が浮上しているからです。米ドルはITバブルがはじけて以降価値が下がりっぱなしであり、2007年のサブプライムローン問題による金融不安がより一層のドル安を招きました。固定相場ですからそのドルとのペッグ制である中東の通貨も価値が下がり続けてしまい中東の国にとっては大きな損になっています。また、原油高による経済発展などで米国依存が少なくなってきた中東の国々はこれ以上ドルペッグ制を続ける意味がないとドルペッグ制の廃止を検討し始めたのです。
ドルペッグ制が廃止されるとどうなるか?
ペッグ制が廃止 → 通貨高
仮にドルペッグ制が廃止されるとどうなるかというと、かつての日本のプラザ合意と同じようなことが起こります。ドルペッグ制が廃止されると過小評価されていた中東通貨が一気に買われかなりの通貨高になることが予想されます。これはかつての日本のプラザ合意からも容易に想像がつくでしょう。
中東が資産を買いあさる
通貨高による中東産油国のメリットは、ドル建て資産が切り上げ分安く買えることになります。かつての日本のプラザ合意の際は日本は240円から120円の切り上げをしました。すると円はドルに対していきなり倍の価値を持つことになり、日本にとってはドル資産が半値になったことと同じになります。そこで日本円によるドル資産の買い漁りが起こり、当時は米国資産のバーゲンセールと言われていたほどの勢いだったそうです。その消費による好景気で株価も大きく上昇します。さすがに半値の切り上げはないでしょうが、同じようなことが中東通貨でも起こりうる可能性があります。
すでに切り上げを実行したクウェート
実はすでに通貨切り上げを行った国があります。クウェートは2008年5月に他の中東諸国に先行して米ドルペッグ制を廃止しました。その後クウェート・ディナールは4.5%も上昇しました。このことからもペッグ制廃止による通貨高はかなり確信めいたことであると予想されます。
このことからどう儲けるのか?
この切り上げを見れば、通貨切り上げ前に中東通貨KWDをもっていればかなりの通貨高の恩恵にあずかれたことがわかるでしょう。KWDを買うのですからUSDKWDのショートポジションになりますね。そう、今FX投資家で注目されているのが、通貨切り上げを見越して中東通貨を買っておくべきなのか?ということなんです。
ドルペッグ制廃止を見越して中東通貨を買うべきか?
私の予想
個人的な見解ですが、私は中東通貨を買うべきではないと考えています。中東は今、活気に沸いていて特にUAEのドバイ首長国などはインフレを抑えるためにも経済のためにも通貨高にしたいのですが、結局その判断は中東の盟主:サウジアラビアのさじ加減ひとつにゆだれられていると考えています。中東各国は、いいも悪いもイスラム教の聖地メッカがあるサウジアラビアにほとんど絶対服従の関係を築いていて、他の国の意見よりもまずサウジの考えが重視されます。そのサウジアラビアはまだドルペッグ制廃止に消極的なのです。サウジアラビアの王家:サウード家はかなりアメリカ依存のお家柄であり、地位と権力を維持するためにもアメリカとの関係を崩したくないと考えて政治を行っています。そのサウード家の絶対王政のサウジアラビアが今後数年でドルペッグ制を廃止する可能性はかなり小さいのではないでしょうか?また中東通貨のポジションはスワップがマイナスのところがほとんどなので何年もスワップを払いながら待っているのはリスクが大きいです。ファンドのような資金力豊富ならともかく、資金が有限で少ない個人がスワップを払い続けながら中東通貨を持ち続けるのはリスクが大きいでしょう。
よって私は中東通貨買いをオススメしません。
中東通貨は両方マイナススワップ
中東通貨を買うにはGFT業者、SAXO業者で取引するしかありません。しかし中東通貨は流動性が少なく、規制もあり調達コストがかなりかかります。このことは中国の人民元と同じで結果的にスワップは両方マイナスか、USD買いのほうがプラスといった状況になることが多いです。つまり中東通貨を買うポジションを取ると毎日スワップを払い続けなければいけないのです。いつくるかわからないドルペッグ制廃止による通貨切り上げに備えてたくさんポジションを取れば、毎日結構な額のスワップを払い続けます。正直これはつらいのでオススメはできません。