中高年ワーキングプアは新時代に対応できず切り捨てられた

若年層と中高年に多いワーキングプア

若年層と中高年に多いワーキングプア

上の図は厚生労働省の平成19年度の 「賃金構造基本統計調査」 による年収200万未満の労働者を年代別に表したものです。日本ではる年収200万未満の労働者をワーキングプアとみなしていますので、これはワーキングプアを年代別に表したものでもあります。ご覧のようにワーキングプアは全ての年代で30%以上を超えており、年収200万未満の労働者が1,000万人以上いることも納得できます。そして特にワーキングプアが多い年代が、20~24歳の若年層と50歳以上の中高年です。特に40代からはどんどんワーキングプアが増加していき、還暦を迎えるころにはグンと増えています

中高年ワーキングプアの実態

 引用:NHKスペシャル「ワーキングプア ~働いても働いても豊かになれない~」 

地方格差による貧困を受ける高齢者


秋田県仙北市角館町で服の仕立て屋を営んできた74歳の鈴木勇治さん。町に40あった商店は11にまで激減し、鈴木さんの店も往時には毎年100のスーツをつくったが、いまではスソあげ(100円)とサイズなおし(1000円)ばかり。年間の事業収入は25万円たらずで、一月の売上は1万円にも及ばない。彼は100~200円の缶詰めと納豆パックで細々と食事を済ます。鈴木さんの年代なら年金収入があると思うだろう。しかし鈴木さんには妻がいて、その妻はアルツハイマーで9年間寝たきりなのだ。この入院代(月6万円)で年金はほぼ全額消えてしまう。この状態なら生活保護を受給できるだろうと推測する人もいるだろう。しかし鈴木さんは妻の葬儀代として100万円の貯金を保有している。この100万円の貯金の存在はそれだけで行政側が生活保護を出さない絶好の理由になる。「結局、貧乏人は早く死ねってことと同じだ」鈴木さんはこういって苦笑いをした。

グローバル経済の煽りを受ける人


56歳の増田豊満さんはメーカーの下請を行う中小企業経営者。仕上げのプレスをしている。素材ごとに対応を変え、「ていねいな仕事が自慢」である。しかし、グローバル経済の影響で安価な労働力である中国人研修生・留学生が日本に大量に導入されたために、発注元であるメーカーは中国人労働力を使うようになった。中国人労働力に次々仕事を奪われたために、プレス1着100円だった仕事は50円に切り下げられ赤字になってしまった。この赤字分を補填するために、妻の礼子さんがパートに出る。そのパート先は中国人研修生の寄宿のまかないというから、皮肉な話である。増田さんの娘は大学進学をひかえており、200万円を金融機関から借りて補填した。しかし今後は借金の金利負担も抱え込むためにさらに生活は苦しくなる。

中高年ワーキングプアの原因 : リストラ

転職や失業などで職を変えた人の中で、賃金が1割以上下がったと感じている人の割合

上の図は、転職や失業などで職を変えた人の中で、賃金が1割以上下がったと感じている人の割合です。ご覧のようにバブル崩壊後から特に45~60歳の中高年にあたる人たちが賃金が減少したと感じています。この原因として一番大きな要因となるのが ”リストラ” による急な失職があります。

リストラによって行き場を失った


バブル崩壊で失われた10年といわれる不況の時代、企業はとにかく経費削減を行わなければならず、特に人件費が比較的高い中高年の人たちをどんどんリストラしました。これによって企業はなんとか立ち直りますが、失職した中高年の人たちには悲惨な現実が待っていました。ただでさえ不況の時代で職が少ないことに加えて、労働環境が閉鎖的な日本では、 ”中高年” を雇ってくれる企業などほとんど存在しません。そのためリストラされた中高年は、行き場をなくして誰でもできるような低賃金の職で食いつなぐしかなくなり、ワーキングプアに陥ってしまいます。

収入を切らせない年代


しかもこの年代は非常に支出が多い時期でもあります。この年代になると住宅ローンの支払いがかさみ、子供もいい年になって教育費も多額にかかります。そんな時期ですから、収入を切らすわけにはいきませんので必死に収入を確保しなければいけません。そのため、新しい仕事へ就くための勉強時間もお金の余裕も無いので、仕方なくすぐに働ける低賃金の職場に行かなければならないという理由もあるのです。

中高年ワーキングプアの原因 : 新時代へ順応できない

旧時代の考えが浸透した年代


この年代の人たちがワーキングプアに陥ってしまう原因のひとつに、新時代への順応ができないという点があります。この年代の方々は若年層のようなゆとりの教育を受けているわけではありませんが、戦後すぐの教育ということでお国に忠誠を誓うように ”いい会社に入って会社に忠誠を誓う ” という旧時代の理屈を教え込まれました。この理屈は高度経済成長期にはとても有効なもので、いい学校へ入り、学歴を認められていい会社へ入り、会社へ忠誠を誓って働けば幸福な人生を歩むことができました。

アイデンティティーの崩壊と新時代への拒否反応


しかしバブル崩壊でその理屈は通用しなくなります。会社はそんな忠誠心の強い人たちも、人件費削減のためにどんどんリストラします。まるで敗戦時に、国に忠誠を誓った若者をどんどん死線に送り込んだ時のように使い捨てます。信じていた会社に裏切られた中高年の方々は、今まで教え込まれていた自分たちのアイデンティティーを喪失し自信を失います。そんな状態で、旧時代の考えと大きく乖離する新時代のIT技術とグローバル資本主義経済に対応するのは非常に困難を極めます。中高年の方々は旧時代の考えに相反する新時代の技術に対応する知識や経験が全く無いのです。そのため仕方なく新時代の知識を必要としない低賃金の職場を選び、ワーキングプアとなってしまいます。

中高年の方々は年少時に教え込まれた
旧時代の考えを裏切られ自信喪失し
その旧時代の考えと乖離する新時代の技術を必要とする
新時代の雇用にうまく対応できないのだ