ゆとり教育の反省をいかせない文部科学省の公教育改革は教育格差を助長した

都市部しか優遇しない公立の中高一貫校

「中高一貫教育」 このイメージは私立だけのものと思われがちですが、実は文部科学省の公教育改革によって、公立の学校にも中高一貫教育をする学校が最近でき始めたのです。その歴史はまだ浅く、1999年宮崎県に宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校が設立されたのが最初でした。以後、年々公立中高一貫校は各地に次々とでき始め、2008年では全国に約20校もの公立中高一貫校が設立されました。以前からニーズが高かったために、こういった公立中高一貫校には受験者が殺到し、倍率は6倍以上にも達しています。

宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校

しかしこの公立中高一貫校は、確かに授業料は公立のため格安になっていますが、寄付金や協力費など何かに名目をつけてお金がかかる点はあまり私立と変わりません。さらに設立からまだ日が浅く、目立った結果を出していないことと、合格基準が曖昧であり、偏差値20の子が合格できると言われるところもあるので、決して良い環境とはいえない状況です。そして公立中高一貫校は大きな都市だけに集中して設立され、情報も行き渡っていないので、地方格差・情報格差にあえいでいる人は恩恵にあずかれません。結果として都市部優遇の学校になってしまっているのです。

公立中高一貫校専門情報サイト : 「むぎっ子広場」

廃校の原因を作った学区自由化

日本の教育では公立学校へ子供を行かせるとき、自宅が属している区の学校へ行かなければならない学区制限というものがありました。要は公立学校は自宅から近いところへ行けという強制があったのです。しかし学校選択の自由が無いことやゆとり教育の影響で大幅に学力が低下してきたので、この学区は解除され、都道府県ごとに自由に通学区域を決められるようになりました。

すると今まで仕方なく学区内の公立へ通っていた家庭が、少しでも進学実績のいい学校へ子供を移し始めたのです。そのため実績があり人気の高い公立学校には生徒が殺到し、逆に実績が無かったり新設されたばかりの学校には生徒が集まらない公立学校の学校間格差が生じました。この結果、本来地域ごとにあるべき公立学校が生徒の減少を理由に閉鎖されたり、隣の学校と合併されられたりと公立学校同士での潰しあいが起こってしまいました。そのため人口が多い都市部ではむしろ学校間格差が大きくなり、自分が属する学区内の学校が廃校になってしまい余計な交通費がかかったり、教師のリストラを起こし、下流の人々にとっては苦痛となる原因になりました。

焼け石に水程度の支援教育学校

教育格差により学歴格差や学力格差が起こったことにより、格差社会の負の遺産とも言うべき落ちこぼれや不登校者、ニートなどが大量に出てしまいました。文部科学省ではこういった落ちこぼれや不登校者、ニートなどの生徒たちを受け入れて再教育していこうという支援教育学校がいくつも設立されました。

・ チャレンジスクール
東京都が既存の夜間定時制高校を統合集約して新設した、3部制(定時制)単位制高校。不登校経験者・他校中退者などを主なターゲットとする総合学科の高校で、内申書不要・単位制による幅広い選択可能科目・カウンセリング体制の充実を行っている。

・ クリエイティブスクール
大阪府が新設・改組した多部制単位制高校。多様なニーズを持つ生徒が目的意識を持って学ぶことができるよう、ワールド(普通科)や系列(総合学科)の科目群を中心とした単位選択制度を持つ。3部制クリエイティブスクールの第III部は従来の夜間定時制に相当する。

・ エンカレッジスクール
東京都が、既設の全日制都立高校から中退率・生徒指導上の課題状況・地域バランスを勘案して指定した、可能性を持ちながらも力を発揮できない状態の生徒を積極的に受け入れ支援するための施策を実施する高校。

・ トライネットスクール
東京都が、引きこもりや時間の制約など様々な事情により、通常の通学が困難であるが学ぶ意欲を持つ生徒のために、通信制課程、インターネット教育、既存の都立高校ネットワークの連携を活用して、学習を支援する目的で設置する通信制高校

しかしこれらの支援教育学校は、崇高な目的で設立されたまではいいのですが、一般的にほとんど認知されず利用されてないうえに、こういった人たちを隔離して世間の目に触れさせないようにしていたり、格差が広がりどんどん増え続ける落ちこぼれや不登校者の数に全く対応しきれていないのが現状です。こんなことでは格差社会にとって焼け石に水程度と言われても仕方ありません。

改革の恩恵は下流には全く届かない

公立の中高一貫学校や、学区制度廃止、特別支援教育学校の設立など、文部科学省はあれこれ手をうって教育格差を是正しているように見えます。確かにこういった多様な教育制度の改正は、都市部に住んでいる一定以上の所得を得ている富裕層や中流層の家庭にしか恩恵を与えませんでした。

意図的なのか本当にわかっていないのか、このような公教育の改革は富裕層や中流層の家庭しか恩恵を受けられず、下流の人にはほとんど届いていません。むしろ地方と都市部との地域格差が広がったり、下流家庭の負担を重くしたりと教育格差はひろがっています。結果としては文部科学省のやった公教育の改革は教育格差をむしろ助長している状況にしてしまったのです。

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